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2007/09/03

SiCKO(シッコ) 〜人が生きて行くと言う事について〜

マイケル・ムーア監督の最新作『SiCKO』を観た。

映画の前に少し運動をして疲れてしまい、つまらないドキュメンタリーだったら絶対に寝るな、と思っていたのだが、前日にネットで席を予約してしまったので、仕方ないと観念して映画館に足を運んだ。

ところがどっこい。全くの杞憂だった。

とてつもなく興味深い内容満載で、飽きる暇がなかった。いろいろ評論されているように、間違いなくマイケル・ムーア監督の最高傑作だ。

この映画は、宣伝されているように、アメリカの医療制度の異常さについて取り上げている。しかし、映画で語られているのはそれだけではない。民主主義の意味や意義、人が豊かに生きる為には何が必要なのかといったような事が、アメリカの医療制度の問題を通じて浮かび上がってくる。

映画の中で言われていたと思うが、人間、普段の生活にゆとりと安心がないと希望が生まれない。希望がなくなった国民は、現状を変えることを諦めてしまう。それこそが企業と為政者の狙いで、そうならないように民主主義のシステムを有効に活用しなければならない。行動を起こそう、と語りかけてくる。

翻って我が日本。先日、救急車で搬送されていた妊婦が、病院をたらい回しにされて流産するという痛まし事件があった。この件については、病院側にも、妊婦側にも、事情も非とされる点もあったようで一概に誰が悪いとは言えないようだが、一つだけ真実なのは、日本の医療制度、医療環境も、決してほめられたもんじゃない、という事だ。

現在、日本で出産するのにはン十万単位の金がかかるという。今後増えてくると思われる低所得者層には結構キツい金額だ。それに、事情があってシングルマザーになる女性も増えている。そんな女性が妊娠した時、既に職に就いていれば出産まで働くことも可能だろうが、無職だった場合、出産費用を稼ごうと思っても、パートでも雇ってくれる職場はそうそうないだろう。また、職があっても、経済的な後ろ盾とゆとりのある産休をとれる人はそんなに多くないはずだ。むしろ出産を理由に退職を迫られるような事の方が多いのではないか?

さらに、産婦人科医を巡る状況も厳しいものがある。現在の日本では、産婦人科医は予約された救急患者の面倒を24時間みているのとかわらないという。終わりのない激務で疲れている上に、最近は高齢出産なども増え、医療事故のリスクも増えている。さらに、医療事故に対しての訴訟も増えていて、産婦人科医の中には精神的に消耗してリタイヤしていく人も少なくないそうだ。

少子化対策が叫ばれて久しいが、まずはこういったところから改善していくべきではなかろうか? 医療費の自己負担分を増やす前にさ。まぁ、アメリカ万歳の安倍自民&公明政権は、アメリカみたいに、病院が支払い能力のない患者を路上に放置する国が『美しい国』だと思っているんだろう。まずは国会でSiCKOの上映会をやってもらおうか。もちろん有料でね。

一つだけ映画にケチつけるとしたら、ムーア監督の顔。痩せたのはいいけれど、その分愛嬌がなくなって表情が険しすぎ。それがチト残念。

<追記>
この記事を書いたすぐあとの9月21日に大阪で、堺市北区の新金岡豊川総合病院の職員が、全盲の入院患者を公園に置き去りにしていた事が11月14日に報道された。あぁ、世も末か。

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コメント

初めまして☆わたしも映画みました。みんな民営化でどうなるかわかってないです。いよいよ郵政民営化がはじまります。郵政民営化はアメリカが日本の国の資産を奪う為の要求で売国です。げんにニュージーランド、フランスなど世界各地で失敗して国営に戻り、英のブレア首相は世界で日本だけが逆行してると指摘。サービスはよくなるどころがどんどん値上がり。郵貯破綻です。森田実「アメリカに使い捨てられる日本」等多くの本でマスコミの書けない年次改革要望書について書かれています。市場原理主義の政策で弱者や地方きりすて、都市や富裕層だけが儲かるシステムでゆくゆくは1割の金持ちと9割の貧乏で、たくさんの人が働いても働いても報われない日が来ようとしています。政治や経済に興味がないためにマスコミに操られ、まったく気づいてない日本国民が多すぎます。「国富消尽」「民営化で誰が特をするか」「官僚とメディア」経済やメディア操作やグローバル化やアメリカの現状などの本を読んでみて下さい。失礼しました☆

投稿: 愛 | 2007/09/03 21:27

愛さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
郵政の民営化については、ホントに何の為にそうするのか、私にも全くわかりません。でも前の選挙では、多くの人がソコん所を深く考えずに、まぁ純ちゃんが叫んでんだから、ってなノリで投票してしまったように感じています。まさに民主主義の危機ですね。
医療問題についても、パンフのコラムにもありますが、自己負担や自費診療があると必ず医療を受けられない人が出てきます。健康に生きることは基本的人権であるはずなのに、お金がないだけでそれが享受できないなんて許される筈がありません。
自民党のセンセイ方は国の財政難を理由に挙げますが、そうなったのは一体誰のせいなのか、胸に手を当てて良く考えてもらいたい物です。
こういった事に対して、国民からもっと怒りの声が挙がるべきなのですが、そうならないのは、既に希望を失った人が多いからなんでしょうかね。まだ手遅れでない事を祈りつつ、"Do Something!"して行きたいと思っています。

投稿: Q | 2007/09/03 22:32

はぢめまして。ブリといいます。テクノラティの検索から来ました。
シッコ・・なんかタイトルでかなり損してるのではないかと(汗)。マイケル・ムーア監督は知ってたのですが今回初だったのですよ。『ボーリング・・』も見てないし。「ご、ごめんよ。マイケル。今度からチェックするから」と言いたくなりました。結構骨太で見ごたえのある演出(つかドキュメンタリーなんだけど)。風刺が効いてますね。つかブラックですって(でもそこがいい)。

この監督って『病めるアメリカ』を風刺するのが上手いですね。なんか感動しちゃったよ。

更新頑張ってください。でわでわ。

投稿: ブリ | 2007/12/12 17:44

ブリさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
まぁ、日本では、タイトルで損してる部分も無きにしもあらずかもしれませんね…(^_^;。

私はムーア監督作品は、あと『ボーリング・フォー・コロンバイン』と『華氏911』しか見ていませんが、どちらも深い内容の作品です。機会がありましたらぜひご覧になってください。

最近の日本は『病めるアメリカ』を対岸の火事として眺めていられないくらい、病みはじめているように思えてなりません。アメリカ的末期症状に行く前に、これを食い止めようとする日本のムーアは現れるんでしょうかねえ…。

投稿: Q | 2007/12/12 20:02

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